宮津 ―海、音色、声、記憶

京都府立大学地域貢献型特別研究〔ACTR〕2017年度成果報告会

日時:2017年10月28日(土)18:30-20:30
会場:カフェ・ドゥ・パン
 〒626-0001 京都府宮津市文珠468(智恩寺山門横 海側)
定員:50名(申し込み不要/当日先着順)会費:無料

開催主旨

昨年度宮津では,ケラーマンが1911年にベルリンで刊行した書籍『Sassa yo Yassa』(さっさよやっさ, 日本の踊り)の新訳が発表されました. これは宮津の「茶屋町」を舞台とする,さまざまな音と陰影に富んだ書物です. 今年度わたしたちは,日本についてケラーマンが書き記したもうひとつの作品『日本散策記』の宮津関係箇所のはじめての全訳を進めています. 今回その中から,「日本の小さな町(宮津)」「暮らし」「祭」など,100年前の宮津の日常や祭りの活気を記した箇所を抜粋して朗読し,はじめてご紹介します. 翻訳者は林立騎氏,朗読は管啓次郎氏です.
当日上映予定の映像では1世紀の時空を超えてケラーマンの声を呼びおこしながら,天橋立の海を生業の場とする漁師たちのくらしや宮津祭に向かう町の熱気,茶屋町の夜など,宮津に折り重ねられてきた時空に近づきます.
映像・朗読に続き,この会の最後は歌で締めくくられます.
今年度新たなリサーチメンバーとしてお迎えした歌手の松田美緒氏は,各地に伝わり,歌い継がれ,変容し,そして眠っていた様々な歌を掘り起こす活動を続けながら,世界をその歌の舞台とする希有な歌い手です. その松田美緒さんと宮津や丹後をめぐり,宮津の歌について考えました. 今回, 松田美緒さんからは“港の歌”と“漁師の歌”をテーマに,お話とミニライブからなるパフォーマンスをご提供頂きます.


プログラム

1 趣旨説明(松田法子/京都府立大学)
2 記録映像「『Sassa yo Yassa』を探して -海と祭編(仮)-」上映(古木洋平/COGI FILM)
3 ベルンハルト・ケラーマン『日本散策記』(1910)より「日本の小さな町(宮津)」ほか新訳朗読(林立騎/東京芸術大学,管啓次郎/明治大学)・作品解説(松田法子)
4 「港の町と漁師の町,海と歌」(松田美緒/歌手)
   ※現地フィールドワークにもとづくミニライブあり
5 意見交換会

当日の記録


登壇者プロフィール


古木洋平(COGI FILM)… 映像作家. 『チャンドマニ』(2010年), 『ギターマダガスカル』(2015年)など, 国内外で音楽をテーマとする複数の映画制作に携わってきた. 当ACTRでは昨年度, 宮津の茶屋町の100年をテーマとした記録映像「『Sassa yo Yassa』を探して」を監督. 今年度はその続編にあたる作品制作に取り組む.

林立騎(東京芸術大学)… 翻訳者, 演劇研究者(ドイツ). ノーベル賞作家エルフリーデ・イェリネクの『光のない。』三部作の翻訳では第5回小田島雄志翻訳戯曲賞. 2005年より高山明/Port Bの作品制作に参加, Port観光リサーチセンター所長として『東京ヘテロトピア』リサーチ監修のほか,『大分メディアコレジオ』,『秋田国語伝習所』など,演劇-観光-教育を横断するプロジェクトに携わる. 当ACTRでは昨年度,ケラーマンとその著作『Sassa yo Yassa』の周辺研究を担当し, 今年度は『日本散策記』の翻訳を担っている.  ※今回は翻訳テキストによる参加

管啓次郎(明治大学)… 比較文学者,詩人. 多言語性・亡命・移住などをテーマとする比較文学論のほか, 詩作, 批評, 翻訳, 朗読など多領域で活動する. 2011年読売文学賞受賞, 『斜線の旅』,『海に降る雨』,『野生哲学』など,著書多数. 詩の朗読では世界各地への招待講演も続いている. 昨年度の当ACTRでは,ケラーマンと共に来日し『Sassa yo Yassa』の挿絵を描いたスイス人画家カール・ヴァルザーと,その弟でスイスを代表する現代作家ロベルト・ヴァルザーを取り上げて講演を行った.

松田美緒… 歌手. 土地と人々に息づく音楽のルーツを魂と身体で吸収し,表現する. その声には, ポルトガル,ブラジル,ウルグアイ,アルゼンチン,ベネズエラ,ペルー,カーボヴェルデなど,彼女が旅した様々な地域の魂が宿る. ポルトガル語・スペイン語圏の国々を中心に,南米やヨーロッパ,韓国など世界各地で公演を重ねる. 2014年, 3年間のフィールドワークにもとづくCDブック『クレオール・ニッポン うたの記憶を旅する』を刊行. ブラジル・ハワイ移民の歌を含め,日本各地の忘れられた歌を現代に蘇らせた作品が高い反響を呼び,文藝春秋「日本を代表する女性120人」にも選ばれている.

松田法子(京都府立大学)… 建築史,都市史,地域史. 民家・町並みから大都市・集落まで、建築と集住体の横断的なフィールドワークを行う. 近年は地形・地質・水系などと地域史を融合させた広域なエリアスタディにも取り組む. 「汀の人文史」,「地-質からみる都市と集落」などのテーマのもと,市民向けの研究成果公開やアウトリーチ活動も積極的に実施している. 2013年度より京都府立大学ACTRにて宮津の調査研究に携わり,昨年度からはベルンハルト・ケラーマンの著作『Sassa yo Yassa』を導きとした研究とその成果公開を進める. 著書に『絵はがきの別府』ほか.